貞彦編〔82〕

 ちょっかいかけるっていうと悪いことばかり連想してしまうけど実は感性を刺激することで父はよく使っていました。覇気がない様相だったらすぐに父にばれるし、お金がない時、父は一瞬で見破る。あたしに一万円をすぐに用立ててくれる。これくらいならいつでも用立ててあげるまでは言いませんが、その頃の父はまだお金に不自由はしていません。退職金は全部母に預けてしまったはず・・・。それでも父はた~んと持っていたのです。こう言う時に耳をかっぽじって聞いていないといけません。なぜならへそくりは父のような散財家でさえ持っていた・・・というミステリーカラクリです。孫が生まれて父は本当に嬉しそうでした。しかし同時に夫に生活力がないことを嘆くのです。何か得体の知れないマグマがあたし達家族を襲っている・・・。そう父は力説したかったようです。あたしも詩人グループに入門し、掲載される小紙を喫茶店などに配布していました。しかしこの冊子を読んでもらえることがいかに大変かを思い知る。今ならこういったブログがあるけど、当時、全く世間と自分を繋ぐものは皆無。それでも何か繋がりはあるかも?って希望は捨てないであちこち回るのです。今の仕事を見て下さい。比較すればみんなに作家の門扉は開かれている!!とあたしが言うのも大袈裟ではないのです。