貞彦編〔2〕

 私は思うに昔はお暇を出すっていう制度が生きていたこと、これは手厳しい措置です。子供をもうける能力に欠けていればその妻の権利さえ剥奪。強引にではない。時間を賭けて徐にです。そういう経緯で父が最初の結婚を終わらせたことに、子供として残念な思い、そして次のことも挙がって来ます。もしもそういうことにならなければ自分はこの世に生を受けてはいないっていう事情です。自分が生まれなかったかもしれないのに、とやかく言及することに意味がある?ってみんなは疑問に思うでしょう。この疑問こそが文学です。自分の身を犠牲にしてまで人は他者について考えるのか?っていう心のしきたりと敷居が全員にあるのです。そこを乗り越えて行く勇気、そしてそれが出来る人こそ神掛かりな人物でしょう。私は当時どれだけ私の姉がみんなに愛されたのか後から耳にします。数ヶ月の命だった。しかしこの墓のことまで周囲は嘘をついていた。父の子供とは言わず、伯母の子供なんだって・・・。大人は平気で嘘をつく、そしてそれを常用する?子供でも付箋を入れる。出来ればそういう大人にはなりたくはないって。