貞彦編〔77〕

 父はこの頃、遠藤周作さんへ熱視線。なぜなら父と同年齢ですでに作家として大成、当時、出版の著書に「結婚論」があります。それから父の憧れはどんどん松本清張に傾いていく。最後は五木寛之になるんですが、亡くなる前にポツンと言う。池田大作さんの本も読んでいることが分かってあたしは驚く。再評価したいって真面目に吐露する。人は年齢を重ねるごとにどんどん自分の中で年輪を広げていき、その箇所箇所所で読む本の歴史が加算されていくというシステム。外側ほどが若い年輪。〔晩年のころ〕脳内読書年輪と命名しておきましょう。父は気に入ればその人の作品を全部読まないと気が済まないほどの凝り性で、きっと読書家としてそこが拘りのメーンだったんでしょう。これほど、本を読む父をまじかで観て来て、あたしは父の姿に大穴を見つけていたことが今にして思えば発見だったんだな?っていう物語です。父は勤勉でなんの申し分もない教育家だったと思う。子供をきちんと教育出来なかったという処の悔やみはあったものの本人に限って言えば、すこぶる出来る。教員の世界で出世はなかったけど、それに上乗せして言えるのは、本の虫だったこと。行に精通しているという極み。ちょうどみんなが父とあたしを比較出来る場所を設けているので、見易くなっていますね。サクセスの法則です。自分が納得出来るサクセスとはなんなのか?そこを極めているか、いないのか?ここがこの先、重要になるのです。