貞彦編〔36〕

 あたしは伯母から和田家の歴史を記録してくれと言われてその当時は書く意味について自問したほどです。この人、何言ってるの?っていぶかったほどです。しかし一回目の結婚を終わりにして、それから二十年も経過してあたしが中二の時に伯母はもう一回結婚へと重い腰を上げます。毎月のお給金をタヤリンに渡しても、全部をタヤリンは伯母の為に貯蓄するかお布施に使う。このままタヤリンと一緒にいれば母と娘がいつか、精神的に滅びてしまう?って伯母はもしかしたら憂いを持っていたかもしれません。結婚してももはや子供が出来る年齢ではない。二回目の結婚は49歳になっていたからです。でも父はその結婚の為に、人生五十年で始まる敦盛の踊りで姉を驚かすのです。あなたは、49歳で再び、花嫁になる・・・どうぞ、末永くお幸せにっていう父から姉に捧げたあの姿にあたしは感動するのです。人生の機微がそこにはあって結婚をいかに父が大切に捉えていたか?呑み込めるのです。あの時、まだ、父も四十代。どんな人生が待ち構えるのか、そこはまだ全く見えなくて、恐らく野心を抱いていたと推測する。あたしは中学二年で伯母が再婚へ向かって行ったとき、伯母の女性らしさの彷彿に参るのです。伯母がまるで別人に見えた・・・いつでも同じではなく、女子はある日突然変身を果たす。今にして思えばこの結婚式を見たことがあたしの執筆生活の段取りを決めさせた出来事だったかも?って。父の踊りの真剣さ・・・そして不慣れさ、しかしこの踊りには魂が籠っていたのです。