貞彦編〔27〕

 人様を先に行かせているのが、負け組です。父も負け組と世間から評価され、常に言われ続けた。そこが弱いんだろ?って馬鹿にされ、弱みを突かれた人間です。いい大学は出てないし、目立った良さもない。どこで父の人生を基準に出来るのか?ってみんなが疑問符を呈する場面かもしれない。ついついあたしも父の良さを見逃してしまっていた・・・浅はかだったと父に詫びます。あたしの母が評価しないからダメだと思った。そして周囲も評価しなかったから・・・後のあたしが六十歳の還暦を過ぎて、ようやくとぼとぼと行くその道のりで、父は凄かったんだなあって分かるのです。親は子供にある程度の財産を残して死にたいと誰もが思う。しかし小銭合わせて五百円もなかったことで父が何を残したのか?あたしなりに考え及んでみたのです。お金ではないということです。自身の奮闘だった。あたしは安易にとらえ過ぎていた至らない娘で、父の狙いは別にあったのです。要するに、ものになる人物に育成してくれ。それは学歴主義でも構わない。人の上に立っても恥をかかない人物です。たとえ、どんな道に進もうとも、必ず、ぼろが出て来る人間はやはり収まりが付かない人物。たとえ、庶民でも構わない。忸怩たる思いを抱く負け犬でもいい。勝ち組を一旦先に行かせても充分いい。これはどういう意味なのでしょう?