貞彦編〔72〕

 栄光のルマンがなぜ、スティーヴ・マックイーンにとって人生を分けたのか?ビフォー&アフター〔この後たて続けにパピヨンタワーリング・インフェルノゲッタウェイなどの大作に出演〕になったのか?その理由がようやく昨日理解が出来る。彼は監督とたびたびぶつかって、最後には、念書まで書かされていた。そのサイン書きの最後に、自筆で、魂を売った男と・・・。なんていう映画に際しての彼の生き魂〔イキコン〕だろうか。ここまでの人物は正直観たことがない。しかし、何が何でもこの映画は完成させないといけなかった。彼は投げ出してしまうっていう最悪のことは回避し、言われるまま撮影を続行。心の中では忸怩たる思いが怪物のようにのしあがって来ても、耐えた。耐えなければならなかった・・・。金銭的なものがあったという。映画は赤字、しかも負傷者は出る。足も切断しなければならない程の事故。しかし映画が完成したことで興行収入とは別の無類のサクセスは残った。今でも本物のレースファンたちの心をぎゅぎゅっと握りしめる。彼はあたしの母と同級生とはいえ、1930年、3月24日生まれ。だからちょうど生誕九十年に今年があたる。今でも天国で彼は思っているだろう。自分のやり方でこの映画を仕留めたかった・・・と。しかしあえて他の人々の尽力とアドバイスの効能にも着目したい!!映画は個人の暴走を許さない。いい映画であればある程....そこが決め手になったのだろう。