貞彦編〔143〕

 あの大富豪の兄弟の転落ばかりを言いたいのではなく、実は裏では褒め称えたい部位もあってそれが実験です。エリート大富豪からどん底まで落ちたダン演じる青年は刑務所にぶち込まれ、元娼婦に助けられ家に引き取ってもらい寝床を得ます。もちろんこの女性も最初はお金を貰ってそういう役目を引き受けていたんですが、最初から勘はある。この人物は罠に嵌められているんだな?っていう率直な思いです。しかし何かと世話をする内にも友情以上のもの、相手は高貴な方なのでは?っていう感触が得られる。もう片方のエディが演じた黒人の貧しい若者もいい服を着せられていきなり、株価の予想を訊かれて戸惑う。いい加減にアテズッポで言ったのに株価予想が的中して、この世界は空気が支配することをいち速く知る。そして身なりです。身なりがいいと人は丁寧に扱う。見下すことをしない。試しに前、たっむろしていた飲み屋に入って店主と話すと目の色が違う。店主も何かがあった・・・・と直感し、貯まってたツケを返せよ!?って催促。するとエディ演じる若者は即座にほらよ!!ってつけを返す。しかしその返し方は横柄な仕草なんです。黒人は出世というものを身を持って知る。こういうことなんだな?って。人から蔑みを受けず、始終堂々と振る舞える・・・なんていう特権なんだ・・・って。今までの暮らしの暗闇もしかし忘れないその黒人の緻密な感性を見ていましょう。そこが侮れないのです。