貞彦編238

 父はほぼ戦争についてを語らなかった。そうなんだ?って皆も驚く場面。人を殺す場面すらなかった。それは嘘はないって信じている。考えられるのは通信兵だったから?台湾を飛び越えてアメリカは沖縄にまず軍を進めていったからかも。どっちにしても父が呑気な茶坊主的な性格があって、その当時のこと、自分が嬉しかったこと、あたしに述べるにとどまる。他の同年代の男の子たち、悲惨な過酷な戦争を生き延び語り部になった人々の話に耳を澄ませても、父にはよんどころのない軍隊への憧れもあった・・・これは恐ろしい話。しかし昔の男児はそういう風に育成された一面も否めない。海軍一等兵になった話を語るとき、どういう訳か、肩で風を切るような男の子の風貌に変身。娘としても意外だった。父は戦後、槇という駆逐艦で日本へ復員する。この時、三月だった。昭和21年だ。だから父はレイテの戦いも知らない。台湾にいて情報は中々入らなかった。しかしこういう戦況の中で、日本が勝てばな!!って一縷の望みを抱いていたことは言える。しかし戦争終わればいいな・・・なんて思ってても言えない。大きな権力の下につくって怖い!!言いたくとも言えない。若者の何人がそれを思っていただろう。