貞彦編〔101〕

 本当は類首としてまだ沢山控えていましたが、蹄鉄の線も候補としてあった・・・そして大事な思惑も隠れていた。日本人が終戦後、根本的に人間が変わってしまったことです。特に、男子に言えますね。それは敗戦がもたらしたものですから仕方ないし、責めても意味がない。あの終戦までの長さを思うと・・・戦艦大和が沈んでそれから終戦まで四ヶ月に鍵がある。なんでそこまで時間が掛かったのか?っていうことでしょう。しかしダイナミックに捉えれば日本の中核が戦争を終わらせたくはなかったことは言える。日本がよその国に統治され、がらっと変わってしまうことに憂慮はあったし、日本人としてプライドがそれに堪えられるのか?そこに鬩ぎは終始した。原爆二個が落されポツダム宣言を受け容れて新しい日本が幕を開ける。最初の十年はむちゃきつかったけど、どんどん力を付けていく日本の繁栄を振り返る時、次のことを忘れません。気掛かりだったのは、去勢された雌馬みたいな男子がやけに増えていったのではないか?っていう憂慮。子供心にも気が付くことはあった。いたはずの益荒男が姿を消してしまったのです。勇壮で誠もあって正義感も強い男・・・。しかし負けてしまったことでさらなる奇跡も起こっていました。女性たちの個性と躍進です。自由の国である証明が相次ぐ。アメリカンドリームの片方ではジャパニーズドリームの開花もあった。あたしは捕虜になった経験を持つ父がひとつのサンプルだと思います。捕虜になっても台湾の人々は日本に礼を尽してくれたと言うのです。中国軍の目を盗んでバナナの差し入れがあった。そのことが忘れられないってあたしに話してくれたのです。