貞彦編〔48〕

 おっちょこちょいのあたしはある経験がきっかけでお尻シャワーを使用出来なくなっていたんです。いや、語弊がありますね。使ったことがないので、いつか使いたいっていう気持ちで超最新設備の病院の新トイレに入りチャンスだと思ってチャレンジ。そこでぼたんを押し間違って溢れだす。止める為にどれか押せばいいのに分からない。テンパってもう水を止めることが出来なくなって床まで水が溢れる。人生最大の危機です。おまけに悪いことが起きる。雑巾探そうと出て来たら、なんと次女がすぐ入って転ぶのです。流産危機で入院していたのでムチャ慌てる。どういう言い訳も出来ないまま雑巾を持ってトイレに行く。大丈夫?ねえ?この病院おかしくない?いや・・・そ、それは・・・あたしは自分の不祥事を話せないまんま固まっている。もしもあたしの赤ちゃんがダメになったら病院のこのトイレのせいよね?って。ようやく次女を落ち付かせて床も奇麗に拭いてあたしは地獄の黙示録を思い出すんです。単なる機器オンチもこういう場合、人の生死まで発展して行くこと、それからお尻シャワーは絶対いじるまいって。でも気になるじゃないですか?何のボタンを押したか?あたしは子どもが一緒じゃない時、一体あれはなんですか?ってと看護師に訊くとなんと、お掃除する方の為にあるボタンですよ?って。あたしは宙返りしそうになります。トイレには説明書きはあったはずですよ?って。そ、そうなんですね。それから三週間もせず娘は転院を言い出します。原因はトイレの洪水事件。身がつまされるけど渋々転院を了承しました。