貞彦編〔43〕

 竹馬が学校で流行ってそれに是非とも乗りたくてあたしも父にせびる。どうせ作れないってダメモトで頼んだのに、さっさか完成して立派な竹馬を渡される。父を見直した瞬間です。全然出来ないってあたしが低く見積もったのに、どうでしょう?あたしの中に偏見があった証拠。それに乗って遊んで、しかし一週間もすれば又違う遊びを発見してみんなで共有。この頃の遊びには自分でもめくるめく思いがぎゅっと詰まっていることに驚く。田舎に行けば行くほど、そういう出会いもあって、あたしが家にじっとしていることは余りない。弟が段々大きくなってあたしが出掛けるたび、あとを追って来る。この時ですよね。あんなにいとおしかった弟も邪魔に思える。自分を戒める。彼も興味一杯の時期。あたしの年齢と六歳下であっても彼も交えて充分遊べるはず・・・。しかし遊べないものもある。バスに乗ってあたしが現川〔うつつがわ〕に出掛ける時など公共の乗り物乗車の時です。なんとも寂しそうな彼の顔を見ながら、イイコトも悪いことも人生は交互に巡ってくるんだな?人間て勝手気ままなんだな?って自分を諫めます。あんなに一人ぼっちが寂しくて兄弟姉妹のいる子をせん望の眼差しで見つめていたのに、今は贅沢な悩みに身を置く。これはしかし自分の中で納めます。彼はあたしのズルい面も一杯見て来た。そういう意味では凄いですよね。