貞彦編〔19〕

 日本はこの敗戦をきっかけに大きく軸を取り直します。民主主義の世の中になって人々の思いも日々闊達になっていく。戦後十年はそれ相当に食糧不足に苦しむけれど、あたしが生まれる1956年の前の年、画期的な枠組みに国は燃えています。55年体制です。揺るぎのない平和気質と生産的向上。いけいけどんどんだったあの頃・・・思い出してもすべてが右肩上がりであったと・・・。今回のコロナで身に沁みるのはソーシャルディスタンスです。まるで、これは、あたしの生き方そのもの。誰とも迎合せず、そして誰とも懇談もせず、黙々と自分の作家的信条を日々遂げていく。しかし一般の方々にこの様式は全く合いません。作家や歌人ならひとりを楽しむ素地があるけど、一般の生活力旺盛な人々なら、物足りないと思うのは健全の証明です。早くコロナが撲滅出来るようにみんなで協力し封じ込めていきましょう。あたしは巷のニュースで発見しました。コロナでネットカフェが閉まって運悪く行き場を失った人が路上生活をしていた。すると、その彼に声を掛ける人がいた。彼は行政に案内され救って頂いたという。日本ってまだ見どころがあるな!!って感動しました。そういう行き場を無くして路上生活になってしまった人々には住所もない場合が多い。苦悩する人を見つけたらすぐさま、助けたい!!っていう気モチ大事だと思う。協調精神よりもある意味突出した心です。戦中はどうでしょう。混乱の中、人の生死も分からない。郵便さえどこへ行ったか?多くは届かない。タヤリンは貞彦の安否が是が非でも知りたい。戦争が終結しても生死さえ不明だったのです。